RSNA2016 その4 Philips MR

新世代プラットフォーム装置出荷開始

今回のフィリップスの第一の話題は、次世代プラットフォームの装置を「既に」出荷開始するということでしょう。これにより近くリリースされるさまざまなソフトウエアを実施できる環境が整います。

テスラ・モーターズのやり方に似ている

ちょっと話題が異なりますが、皆さんは最近、テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏が、「『完全自動運転を可能にするハードウエア』(カメラ8個などから成る)を搭載したモデルSの出荷を既に開始した。現時点ではまだ部分自動運転(Level2 )のみだが、今後開発が進むとともに、インターネット経由でソフトウエアアップデート*を行い、完全自動運転(Level 4)できるようにしていく」と述べたことをご存知でしょうか。

  • ソフトウエアアップデート:テスラは車自体が通信機能を持っており、定期的にソフトウエアアップデートされて車の機能が高まる。通常の車は購入したと同時に古くなっていくが、テスラの場合は、購入後も機能が向上することをウリにしている。

これは絵空事ではなく、実際にもうLevel 4運転がカリフォルニア工場の周りで実現している様子を公開したのです、2年程度のスパンでの実現を目指していることが分かります。このため「まだ出来ない」にもかかわらず、必要なハードだけを入れたものを先に出荷するのです。

関連リンク:テスラが完全自動運転の動画を公開(カメラ8個などの配置も末尾に掲載)

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dSync

このテスラの例に似て、フィリップスは、dSync(ディーシンク)と呼ばれるシステムを搭載した機種を出荷開始するのです。 内部では、D-DASと呼ばれることもあるようです(そして今までのはC-DASと呼んでいるらしい)。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-29-4-22-21

↓細かい点などはまたITEMの際に見ていただくとして、ごらんのように、新型のシステムにおいては、コンピュータとのやり取り(たとえば 極めて複雑なRFパルスの波形を入力し、実際にどのように波形が送信できたかをフィードバックする)を超高速にして、応答性を向上することで、すぐに修正できるようなーつまりiterativeな/interactiveなープロセスを改善しているようです。RFの評価間隔として20ps(ピコセカンド)と書いてあるのが左下にありますが、従来はus(マイクロセカンド)などの単位でしたので、こういったことでTransmit SENSEや同時多段面励起の品質を向上するわけです。

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Release 5.3(これまでと、今回の追加)

これまでのR5.3

すでにIngenia 1.5Tでは5.3がリリースされており、以下が主な新しい機能です。XDというのは、Extendedのことで、従来よりも機能が拡張されていることを示します。

  • mDIXON XD
  • MultiVane XD
  • 3D VANE XD
  • O-MAR XD
    mDIXON XD

不飽和脂肪酸の制御などにより脂肪抑制能力が向上したmDIXON

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MultiVane XD

動き補正。BLADEの用い方に特長があり、従来よりも動きの補正能力が向上。

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3D VANE XD

Spiralの3Dシークエンス。肝臓などの息どめEOB造影ダイナミック撮影などに用いる(シーメンスのSTAR VIBEが有名)

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O-MAR XD

これは写真を撮るのを忘れてしまいましたが、磁性体アーチファクトを抑制するシークエンスです。

今回リリースのR5.3

今回のR5.3では3Tにいよいよリリースされますが、以下のものが製品として搭載されます。

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  • Black Blood Imaging
  • 3D-TRANCE
  • Multiband SENSE
  • 3D ASL
  • 3D NerveVIEW
  • Zoom Diffusion
  • LOBI
  • NeuroQuant
Black Blood Imaging

これは定評のあるiMSDEがとうとう製品版になったものです。BlackBlood効果は抜群ですね(論文)。

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3D-TRANCE

これは中村理宣(まさのぶ)さんが八重洲クリニックにいたときに開発したCINEMAのことです(論文)。PhilipsではNon-contrast MRA系はTRANCEの名前がついているので、今回TRANCEというネーミングになったみたい。でもCINEMAのほうが通りがいいですねぇ・・。標準シークrンスのなったのは◯ですね。

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Multiband SENSE

これはFDA Approvalにはなっていませんが近々にとれるのではということでした。

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3D NerveVIEW

これは米山正巳(まさみ)さんが八重洲クリニックにいたときに作ったSHINKEIのことですね(論文)。これも製品版に。神経は以下の3つのテクニックを組み合わせると良い臨床ができると思います。

A: 3D NerveVIEW = これは局所の描出と(後処理による)全体把握に優れています。
B: DW Neurography = 全体の把握(俯瞰)に優れ全身も撮れるので、CIDPのような疾患の全身の把握等に用います(手前味噌ですが 参考にしてください→ 論文1論文2
C: b-FFEなど=これはintramural portionの観察などに用います

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Zoom Diffusion

これは、局所励起のDWIです。これはかなりキレイに撮れていますね。

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LOBI

これは、Longitudinal Brain Imagingの略です。この場合のLongitudinalというのは、経時的な観察のことのようです。こんな風に、MSのプラークや、あるいは腫瘍などの増減を解析できるもの。

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↓これは、経時的な増減を色(赤:出現、青:減少、消失)として示したもの

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WIP

Compressed Sensing はWIPですが、先に紹介した新しいプラットフォームとのセットで近く可能になるようです。GEと異なり、ここでは「Compressed SENSE」という名前がついています。

CS-SENSEという表記は(たぶん)Compressed-SENSE + SENSEの合計でのR factor表示です。

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九州大学で行われていたAPT imagingも近く製品搭載になる見込みのようです。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-29-5-32-17

これこそ私が超待っているものです。Multiband SENSEでBodyDWIができるようになったら、本当に短時間撮影が可能になります。その日が来るのが楽しみです。%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-11-29-5-32-25

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tarorin東海大学工学部 医用生体工学科 教授

投稿者プロフィール

MRIの撮像・フィルム焼き・患者導入に従事していた経験を活かし、企・技・医の中間の立ち位置を大切にしています。モットーは研究結果を中立的に判断すること、皆で研究成果を愉しむことです。

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