STIR法のTI値 ~心が温かく働き者の人へ~

高原先生のマネをして実験してみました

均一な脂肪抑制効果により、組織の挫傷の詳細な評価を可能にするSTIR法。さまざまな脂肪抑制法が開発され、SNRが低いSTIR法を使用する機会は少なくなってきたでしょうか?当院では、装置が古いこともあり、まだまだSTIR法は主流です。
当院では、死亡時画像診断(Autopsy imaging : Ai)においてCTに加えてMRI(Ai-MRI)も撮像しています。このAi-MRIを撮像しているなかで、STIR画像の脂肪抑制が不良になる事例をいくつも経験しました。STIR法の最適なTI値は、TR、TE、turbo-factor (TSE factor)、echo spaceによって変化することが知られています。しかし、当院のAi-MRIにおいて撮像条件は変化させていなかったため、「これはT値が変わっているに他ならない!」と気がつきました。はじめは腐敗などの死後変化によってT値が変化しているのではないかと思っていましたが、いつしか脂肪のT値は温度に相関していることに気がつきました1)。温度が下がるとT値が短くなるのです。脂肪の結合力も変わり、プロトンの挙動が変わるので当然です。MRIは、温熱療法の温度モニタリングなどにも応用されており、このようなことは昔からわかっていることですが、通常の撮像技術には応用されていません。
これを知ってから1つの疑問が浮かびました。冷え症の人の手(冷たい手)を撮像するときのTI値は、通常と一緒(TI:1.5Tで約170ms)と同様でいいのでしょうか?
そこで高原先生のマネ2)をして実験してみました。

実験1

高原先生がおっしゃる通り、熱いのか、冷たいのかよく分からない不思議な感じでした。(顔がいいですね!!;笑←編集者のコメント)
図1

実験2

直後にこのようにマイクロコイルで撮像。右手は温まって赤くなりました・・・。

非接触温度計で計測した撮像前の指の表面温度は、

左:15℃  右:39℃

図2

結果1

母指のTI=170msのSTIR画像です。

(冷たい)左の骨が高信号に描出されています。

図3

結果2

同様のT1mapです。

図4

左母指中手骨(ROI部)のT1値:約200ms [冷たい側] 右母指中手骨(ROI部)のT1値:約250ms [温かい側]

T1値に50ms程度の差があります。

考察

このような変化は、淡く全体的に高信号となるため、病変と間違う可能性は少ないかもしれませんが、病変をマスクしてしまう、あるいは判別を困難にする可能性があるのではないでしょうか。冷え症の人の手足のSTIR法を撮像する際は、少し手足を温めるか、TI値を20~30ms程度短くして撮像することを検討してもいいかもしれません。そんな私も冷え症です。

冷え症は、自律神経がうまく働かないことによって起こり、「心の温かい人は手が冷たい」と言われますよね・・・科学的な根拠もあるようなので興味のある方はインターネット検索して下さい。また、冷え症のなかで一番多いタイプは、「仕事一筋!」というような働き者だそうです。私は、働き者ではありませんが、少しだけ心は温かいです(笑)。

ライター紹介

小林君
 小林智哉(筑波メディカルセンター病院)

MRIと触れ合って約10年。私の主な研究テーマは「Ai‐MRIによる死因究明」です。動きが大敵なMRIにおいて、全く動きのない対象を撮像しています。映画“チームバチスタ~ケルベロスの肖像~”では、MRIの部分で監修をさせて頂きました。(と言っても、見ているだけでしたが・・・) ストーリーは、9TのMRIが死因究明をするという映画です。すでにレンタル開始されていますのでご興味あると方は是非ご覧ください!もちろん日常業務では生体のMRIも撮像しています!

1)Kobayashi T, Monma M, Baba T, et al. Optimization of inversion time for postmortem short-tau inversion recovery (STIR) MR imaging. Magn Reson Med Sci 2014; 13: 67-72
2)MRIで知る入浴の効果 Effect of taking bath – Japanese ONSEN – visualized with MRI. http://tarorin.com/mrict/2014/12/japanese-onsen/

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