生体組織中の水は、まず高分子の影響を受けていない自由水と、高分子の影響を受けている水和水(結合水)に分類される。さらに、水和水は高分子と結合している結合水と、それ以外の構造水に分けることができる。これらの中で、生体組織の緩和時間に大きく影響するのは自由水である(純粋の緩和時間が他の有機物に比べてかなり長いためと考えられている)。緩和の速度は、溶液中において対象原子核を持つ分子の運動状態に強く影響される。自由水の場合は活発に分子運動しており、緩和の速度は緩やかであるが、結合水は周囲の高分子の影響で運動が制限され、緩和は促進される。生体内において、水分子は上述の状態を極めて高い頻度で交換しあっており、観測される組織の緩和時間は自由水と結合水の存在比に強く依存している。
(石森 文郎)
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