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はじめに
私が入職した当時、病院にはCT装置がなかったため、手術室での透視イメージ業務では、患者さんのX線画像と0.5TのMRI画像を用いて関節内骨折を立体的にイメージしながら操作していたことを覚えています。その際に膝関節の軟骨評価に用いていたシーケンスは、T1WIに脂肪抑制(CHESS法)を組み合わせたもので(以下、T1 FatSat)、撮像はスライス厚2mmで行い、画質を担保するために1方向あたり約7分をかけ、コロナル、内側サジタル、外側サジタル、アキシャルの4方向で合計約30分を要して軟骨のみを評価していました。
さらに、半月板や靭帯、炎症・腫瘍の撮像も必要だったため、膝関節の検査には合計1時間を費やし、「1.5T装置に負けない画像」を目指していました。振り返ると、これらの経験は非常に貴重であり、今でも自分の技術を磨くための基盤となっています。
T1 FatSatによる軟骨評価について
関節の硝子軟骨は、その周囲に存在する軟骨下骨や関節液の影響を受けるため、関節軟骨のみを高信号として描出することは難しいです。しかし、脂肪抑制を併用することで、相対的に周囲の組織よりも高信号に見せることが可能となります。各シーケンスにおける軟骨のコントラストを以下に示します(fig.1)。他施設ではPDWIを使用することが多いようですが、当院では関節液の信号を落とすことができるT1 FatSatを選択しています。
ただし、T1 FatSatを用いる場合、軟骨内構造の違いによる信号の不均一性や、関節血腫、マジックアングル現象による高信号化、さらに磁場不均一による軟骨描出不良などの課題も考慮しなければなりません。そのため、Flip angleなどのパラメータ設定には注意が必要です。
次に、当院でT1 FatSatが有用であった2症例を紹介します。
症例 ① 肘関節:骨軟骨骨折
骨折症例では、CT画像のみで手術を行うことが多いですが、当院では外傷に伴う靭帯や軟骨などの軟部組織を評価するため、CTと同日にMRIを行うことがあります。この小児の肘関節骨折症例でもMRIの追加オーダーがありました。CTで鈎状突起骨折が指摘され、靭帯の合併損傷を評価するためでしたが、T1 FatSatではCTやBone Like Imageでは表現できなかった「関節内の軟骨の亀裂」を描出することができました(fig.2)。
さらに、Bone Like ImageとT1 FatSatのデータをフュージョンさせて3Dを作成することで、小児特有の骨形態を作成(fig.3)、VR画像を用いて尺骨の軟骨損傷を描出することができました(fig.4)。
症例 ② 膝関節:軟骨損傷
膝関節の軟骨をVRで表現する際、当院では主にFUJIFILMの3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を利用しています。このシステムは、3DのPDWIおよびT2*WIデータから大腿骨、脛骨、軟骨などを自動的に抽出し、軟骨の厚みをカラーで定量的に示す機能を有しています。このため、迅速な当日診断や外来患者への説明が容易に行える点が最大の利点です。
一方で、VINCENTの専用アプリケーションが無い場合でも、汎用ワークステーションを用いてBone Like ImageデータとT1 FatSatデータを加算表示すれば、手動でVRを作成することも可能です。この手法は画像処理に時間がかかるものの、手術時の写真と比較しても病態をより正確に表現できることが確認できます。詳細な病態把握や手術計画を立てる上で、正確なVRの作成は非常に重要です(fig.5)。
これらの理由から、スピードと計測情報を重視する場合にはVINCENTの使用を推奨しますが、病態表現の正確性を重視する場合は、Bone Like ImageとT1 FatSatデータを組み合わせた3D作成を提案したいと思います。少しマニアックな提案になるかもしれませんが、目的に応じた適切な使い分けを試みてはいかがでしょうか。
ライター紹介
福岡整形外科病院 辻 英雄(ツジ ヒデオ)
整形外科専門の技師歴18年、MRI歴17年の技師です!
ほぼ毎週、MRI室とオペ室を行き来しながら、外科的所見に合致する最適な画像を提供できるよう、日々研鑽に励んでおります。意見交換をすることが大好きですので、学会会場などで見かけましたら、ぜひお気軽にお声がけください。
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