兵庫県立がんセンターの重永です。
今回は私が考案した圧倒的な時短を実現したシリコンイメージングについて紹介いたします。
はじめに
シリコンインプラントの破損率や被膜拘縮発生率は種類・世代等によって異なりますが、挿入年数が長くなると増加するという点は多くの文献で一致しています。また、インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)やインプラント関連扁平上皮癌(BIA-SCC)も近年問題視されており、エコーやMRI等で定期的なフォローが推奨されています[1]。
Philips Ingenia 3T(release 5.7)には「Silicone only」シークエンスとしてDouble IR法が搭載されていますが、長い撮像時間・低SNR・体動・水抑制不良といった課題があります(図1上段赤矢印)。
これを改善すべく、「4S(フォース)」を考案しました(図1下段)。
4Sでは信号抑制不良が著しく改善されています。
ちなみに4Sのスペルアウトは「STIR SPAIR(water-suppression)Single-Shot」か、「Silicone Scan in Seconds from Shigenaga」のどちらでもお好みで(笑)

4Sの考え方とパラメーターのポイント
シリコンの共鳴周波数は脂肪と近いため、周波数差を利用して脂肪信号とシリコン信号を分離することは困難です。STIR法に周波数選択的水抑制法(SPAIRws)を併用する事でシリコン信号のみを取得する事が出来ます(図2)。

SPAIRFSは「Water only」、STIRは「Water + Silicone」、STIR+SPAIRWSは「Silicone only」の画像をそれぞれ取得できる。
当初、体動補正のためMultiVane法を併用していましたが、「シリコンのT2値が長いなら、Single-shotでもボケないのでは?」と考えました。
図3に4Sの詳細なパラメーターを示し、重要なパラメーターに矢印を付します。

SPAIR IR delayの設定にはAutoがないため、コンフリクトしない最短値を入力してください。
また、InteractiveF0をselectにする事は必須です。中心周波数の確認が出来るようになるので、右側の大きなピークに騙されないように、左側の小さなピークに中心周波数を設定しましょう(図4)。

左側の小さなピークが水信号で右側の大きなピークは脂肪とシリコンである.
撮像時間はたったの23秒なので、2方向目として斜冠状断も撮像します。スライス厚を2.4mm、gapを-0.8mmとする事でボリュームレンダリングを可能にしました。
2D横断像だけでは判りにくかったインプラントの皺や拘縮が一目瞭然となります(図1下段)。
症例例示
図5にシリコンの漏出を疑う症例を例示します。
術後5年目でインプラントの皺の間に観察される水信号(赤矢印)が、術後6年目ではシリコン信号に変化しています(黄矢印)。またインプラント内部にシリコン以外の信号が認められます(白矢印)。
従来のDouble IR法ではシリコンの漏出か信号抑制不良かの判断に迷ってしまうと思われますが、4Sでは確信を持って漏出を指摘する事が出来ます。

おわりに
この手法は特別なオプションを必要とせず、圧倒的な時短を実現できます。
皆様のシリコンイメージングが4Sと共にあらんことを!
参考文献
[1]一般社団法人日本形成外科学会ブレストインプラントガイドライン管理委員会https://jsprs.or.jp/member/committee/breast-implant-guideline/
ライター紹介

兵庫県立がんセンター 重永 裕(シゲナガ ユタカ)
MRI専属12年が経過しようとしています。MRIの話題をツマミにおいしいお酒が飲めます。
最近は身に着けたMRI技術を如何に後輩たちに伝えるかを常に考えていますが、どんどん新しい技術が出てくるのがMRIです。まだまだ後輩達に第一線を譲るつもりはありません。
学会等で見かけた場合には是非声を掛けて下さい。MRIの話題で美味しいお酒をご一緒しましょう!
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