頚部MRI造影後VIBE法のモーションアーチファクトを抑制する最後の手段!

頚部は動きによるアーチファクトの出現頻度が非常に高い!

モーションアーチファクトがしばしば問題となります。当院では十分な説明を行い、嚥下に対しては休憩を入れながら、短時間の撮像を行うなどの対応をしていますが、動きの自制が困難な方も多いです。

呼吸停止下撮像でアーチファクト対策!

単純撮像であればBLADEを利用するなどの方法が考えられますが、造影後(特にDynamic撮像)の場合、当院のMRI装置ではBLADEを利用することは困難です。そこで動きの自制が困難である場合は、造影後の撮像にVIBE法を利用し、撮像時間を可能な限り短縮して呼吸停止下の撮像を行うことで、動きによる影響を抑制した画像が得られると考えました。
下図は義歯を外したことによる口の動きと嚥下の自制が困難との訴えがあった71歳男性の画像です。撮像時間は約18秒に設定し、吸気にて撮像を行いました。
Fig1(井上さん)

図1 VIBE法 軸位断像        a|b|c

a:自由呼吸下にて撮像 b:呼吸停止下にて撮像    c:呼吸停止下の造影後画像
自由呼吸では動きによる画像の劣化が激しかったのですが(→)、息を止めることによってアーチファクトは明らかに低減しました。造影後の撮像でも良好な画像が得られました。

続いて撮像断面を矢状断に設定した画像を示します。口の動きの自制が困難な65歳男性の画像です。図2aは1分程度の撮像時間に設定したVIBE法の画像です。1分の撮像では口の動きによるモーションアーチファクトが出現しています(→)。当然、呼吸停止画像(図2b)は撮像時間を短縮しているため、SNRと分解能は劣りますが、口腔内のアーチファクトが低減し、観察が容易となっていることが確認できます。
Fig2(井上さん)

図2 VIBE法 矢状断像           a|b
a:自由呼吸下にて撮像(Scan time1:13)b:呼吸停止下にて撮像(Scan time0:18)

通常であれば呼吸停止下の撮像は胸部や上腹部などの呼吸による動きが画像に影響する部位に対して行います。しかし、今回のように頚部に対してもモーションアーチファクトを抑制した画像が得られることが確認できました。義歯を外したことによる口の動き、嚥下や呼吸による体動、鼻腔閉塞がある場合などは口呼吸による動きが画像を劣化させることがあります。そんなときには呼吸停止下撮像は非常に簡便であり、とても有効だと考えます。
頚部領域の造影後VIBE法呼吸停止下撮像は、動きの自制が困難な場合は非常に有効ですが、最大限に撮像時間を短縮する必要があります。その結果、SNRや空間分解能がどうしても低下してしまうため、当院では本当に本当の最後の手段として利用しています。

ライター紹介(2回目の投稿です!!)

井上 写真

次世代分子イメージング つくば画像検査センター 井上 裕二

2年ほど前からつくば市の画像検査センターでお世話になっており、主にMRIを担当しています。MRIは非常に難解ですが少しでも知識を増やせるように、今後も頑張っていきたいと考えております。

 

Deputy Editor’s Comments

「早く撮る術」を教えていただきありがとうございました。患者さんの状態のあわせて臨機応変な対応を施すことは大変重要なことと思います。また、その効果の程がよくわかります。今後、BLADEが造影で困難な理由やVIBE法が高速である技術的な理由も教えていただけるとうれしいです。またの執筆・投稿を宜しくお願いします! - tanji

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