キヤノンメディカルシステムズ 2度目の工場訪問記

キヤノンメディカルシステムズ那須工場へ再び

皆様、緊急事態宣言の最中、医療従事者として多忙な日々を過ごしていることと思います。
今回は、2020年3月12日、栃木県大田原市のキヤノンメディカルシステムズの那須工場に見学に行ってたレポートをお送りいたします。
このころも新型コロナウイルスの影響が多方面で出始めていていたため、公共交通機関は使わず自家用車での訪問です。
首都圏から約150キロメートル、約2時間の道のりを経て広大な敷地面積を誇る那須工場に到着しました。

昨年の6月に続き、2回目の訪問です。前回は、最大傾斜磁場強度100mT/mの臨床研究機Vantage Centurian 3Tに搭載された、製品化されたばかりのAIを用いたノイズ除去再構成技術 Deep Learning Reconstruction(DLR)を主に見学しました。

キヤノンメディカルシステムズ 工場訪問記 (1)

今回は、そのDLRが搭載された1.5T装置、Vantage Orianを見学し、広く普及が期待される実用機におけるDLRの効果を体感し、その実力と可能性を皆様にレポートいたします。

Vantage Orian とは

先に到着していた編集長・高原先生と合流し実機見学に先立ち、Vantage Orianの販売責任者である甘利さんから、改めてその特長を中心にプレゼンテーションをしていただきました。
Vantage Orianは、キヤノンの広開口径タイプの1.5Tの最上位機種です。

昨今、3T装置で搭載されている2台のRFアンプによる独立送信を1.5Tでも採用し、広範囲でも高い画質を担保されている点や、受信系において装置が発するノイズを低減する独自技術などが搭載されており、送受信系にこだわりを持った装置との事です。

また、最新のバージョンでは圧縮センシング、ディープラーニングなどが搭載され、高画質と検査時間の短縮が両立できる、MRIを担当者のモチベーションを奮い立たせてくれるMRI装置なのです。

前回の見学時にはAiCE(エース:DLRの商品名)は搭載されておりませんでしたが、それでもMulti-phase Transmission技術により、安定したDWIBSが描出されていました。
キヤノンメディカルシステムズ 工場訪問記 (2)

AiCEとは?

AiCEは、ディープラーニングを用いた再構成技術 DLRを用いて、MR画像のノイズ成分を除去する機能です。

ポイントは、デノイズの方法です。高周波成分と低周波成分を分離し、高周波のノイズ成分のみ学習する事で、様々なシーケンス、部位、コイル、断面などの組み合わせの教師データをそれぞれ用意する必要がなく、幅広い撮像でAiCEが適用できるとの事です。

また、低周波成分を分離しているため画素値への影響がほとんどなく、微細なコントラストなどへの影響が少ない、定量解析などでも使える、などの利点があるようです。ADC値への影響が殆どない様子なども紹介されていました。

下の画像は頸椎の矢状断T2強調画像です。従来は3分程度の撮像ですが。撮像条件を変更し1:13の短時間撮像としました。しかしこれでは画質が落ちてしまいます。この画像にAiCEを適用させると3分の画像とそん色ない画像が得られます。

STIR等、どの部位においても撮像が可能です。

AiCEは、撮像後に任意に再構成させることで高画質な画像を得ることができるんです。

実機を使ってみました

Vatage Orian1.5Tはの最新バージョンでは、AiCEが搭載されています!
もちろん、キヤノンのパイオニアである静音化機構(Pianissimo)や非造影アプリケーションも健在です。

今回はMRI撮像の各シーケンスにてAiCEの果があるのか、検証しました。
まずは、DWIにおけるAiCEの効果です。

上左図がAiCE適用前、右の2つの図が、AiCEを適用しています。
AiCEはデノイズの強度を変更する事もできるため、施設の好みによって調節が可能です。d02というのがデノイズの強度は2という意味です。

上右図(d05)はAiCEの強度を目いっぱい上げていますが、ノイズ以外の部分はしっかりと信号が残っており、正確にデノイズができている事がわかります。

DWIBSもしてみた

下図のDWIBSは、AiCE無しと、AiCE有りを比較した画像です(横断像撮像3step撮像後に冠状断MIP)
脂肪抑制はSTIRのみですが、脂肪信号が均一に落ちており、2アンプの効果でしょうか?電波もしっかり均一に送信されているようです。

AiCE無し                     AiCEあり

Aiceを適用させることで、コントラストはそのままにSNRが向上しています。これは、撮像時間を短縮しSNRが劣化したDWIでもAiCEを適用することでSNRが改善されますので、検査効率が断然に良くなることが伺えました。

さらに驚いたのが、再構成時間の速さです。再構成となると時間的なロスを余儀なくされるかと思っていました。しかし、あっという間に画像ができるんです。

キヤノンさんのお話では、ディープラーニング用に有名なGPUメーカー「nVIDIA」との提携も行っており、GPUが搭載された専用のユニットにて高速演算を行っているとの事です。一般的な画像処理フィルターと変わらない感覚で、撮像後にすぐ画像が出てきていました。ほんの数秒といった感じです。

腰椎を撮像してみました

上図は左がAiCEなし、右がAiCEありの画像です。
1分40秒程度の撮像では元々のSNRが高く、一見AiCEのSNR改善効果は分かり難いです。しかし、脊髄や腸間膜静脈などが、より明瞭に観察できるようになっています(黄色囲い部分)
AiCEの再構成は断面やシーケンスの制限もありませんので、全身MRI撮像で求められているすべてのシーケンスに対し、短時間で高画質化が可能であることが確認できました。
このように、「全身MRI撮像」では様々なシーケンスで広範囲を取らなければならないので、AiCEによる画質を担保した短時間化は非常に有用かと思いました。

非造影MRAには?

キヤノンの非造影MRAは健在で、安定して画像を描出できています。
非造影MRAにも同様にAiCEは適用可能との事です。

しかし、元々SNRが高く高信号に血管を描出する手法であるためAiCEの効果は薄れるのでは?と考えていました。FBIは心電図同期を用いた撮像法で心拍数などにもよりますが、約3分ほどの撮像時間です。ここで短時間でのFBI撮像+AiCEを試しました。59秒にてFBIを撮像し、AiCEを適用させました。

ノイズ成分をAiCEで落とし、血管の連続性向上など、より綺麗になっています。例えば高分解能で撮像して、より抹消まで狙う等、色々と応用が出来そうです。
これについては、別で実験など行う予定なのでいつかご報告させていただきます。
もっといろいろAiCEをいじりたかったのですが、ここで時間が来てしまいました。

最後に

前回のVantage Centurian 3T のAiCEも驚きましたが、1.5TとAiCEも非常に相性が良い事がわかりました。DWIBSやFBIといった1.5Tが得意な撮像でもAiCEは効果的であり、3Tには無い、新しい可能性を感じました。
また、従来の1.5Tでは厳しい高分解能な条件でもAiCEによりSNRは担保できますので、AiCEには、磁場強度の壁を超える事ができるだけの大きなポテンシャルも感じる事もできました。

ご協力いただいたキヤノンメディカルシステムズ株式会社の関係者の皆様、ありがとうございました

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matsushima2

matsushima2社会医療法人社団慈生会等潤病院放射線科

投稿者プロフィール

足立区にある地域中核病院に勤務しています。MRIを得意というか好きで多くを学びたいと思っています。
日々時間との闘いです。新しいこと出来ないかなあと常に頭をfull回転させていますが、空回りも多いです。

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