3T脊椎撮像-ポジショニングの工夫でB1不均一改善

背景

3.0T装置は1.5Tに比べ、SNRが上昇した分、高分解能化や時間短縮といった応用が可能です。しかし、皆さまの施設では体幹部や四肢で画像ムラ(B1不均一)に悩まされることはないでしょうか?これは、ご存知のとおり共鳴周波数の増加によるRFパルスの浸透力の低下、共振、反射によるもので腹部領域では顕著に表れます。この現象は同様に脊椎撮影でも起きます。特に起きやすい領域としては、腰椎を撮像したときの胸腰椎部の信号ムラです。画像を見てください。

図1のコピー

 

→ の画像はさまざまなメーカーの装置で撮影した画像です。原因はやはり3TにおけるB1の不均一と考えられます。となると早く装置メーカーさんに改善したハードやソフトを出してください!!とお願いしたいところなのですが………………..

ポジショニングの検討

いやいやちょっと待ちましょう。何とか今ある装置で改善できないでしょうか?まず共通する点としては、やはり胸腰椎部です。そして普段脊椎を撮像するときのポジショニングといえば。。

図2

大体こんな感じです。腕や肘が邪魔していそうですね。それでは少し実験してみましょう。今回は日立社製 TRILLIUM OVAL 3Tを使用しました。

腕の高さを変えて検討してみました

図3のコピー腕の高さを変えたT1WI-sagittal画像(左0mm, 右80mm)

図4のコピー胸腰椎部の拡大画像

←の画像は寝台から腕 (肘部)の高さを0mmと80mmで比較したT1WI sagittal画像です。0mmで落ちていた胸腰椎部の信号が80mm腕を高くすること(下の方の図を参照)で改善しています。拡大してみると明らかですね。次に胸腰椎部のB1 mapを見てみましょう。

図5

腕の高さを変えたB1 map
まずB1 mapの見方を説明します。設定フリップ角に対し、100%の値が照射された場合は黄緑色、設定値より低くなるに従い青色になります。0mmの脊椎近傍ではかなり青色が占めていますが、80mm腕を上げることでB1不均一がかなり改善されているのがわかります。

腕(肘部)の位置を高くするだけで、腕が椎体へのRFを吸収する影響を軽減することが出来るのです。
それならバンザイすればいいじゃん!と思う方もいるかもしれません。でも高齢者には少し辛いですね。そこまでしなくても腕を80~100mm高くするだけでバンザイと同様の効果が得られるのです。

ただ脊椎で生じるB1の不均一が気になるのは全例というわけではなく、体格がいい人で生じやすく、脂肪の多い女性よりは筋肉質な男性の方が影響は強い傾向があります。RFは筋肉の方が吸収しやすいからですね。ですが3Tにおいては、少なからず腕がRFを吸収する影響はあり、痩せている人で見た目に大きく信号むらが無かったとしても、SNRの向上は期待できそうです。また今回は日立の3T装置を使用しましたが、他社の3Tでも十分効果は期待できると考えています。

スポンジやバスタオルで腕(肘部)を80~100mmほど高くするだけです。簡単ですので是非試してみませんか?

図6スポンジを使用した腕上げポジショニング


 

ライター情報

図7

北海道大学病院 放射線部 石坂欣也

好きなこと     野球!!
最近恐れていること もう片方のアキレス腱断裂
気になっていること 最近みるみる痩せてきた

 

Chief Editor’s Comments

簡単な工夫でびっくりの画質改善。日本磁気共鳴医学会のシンポジューム「匠の技」で講演をしてくださった内容の一部です。ぜひ試してみたいですね。

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