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DWI / DWIBS撮像におけるhalf scanについて
- 2015/6/23
- Information, Other Writers, Philips
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皆さんのご施設ではDWIの撮影条件はどうなっていますか?
最近当院では新しいMRI装置(Philips社製 Ingenia 1.5T & Intera 1.5T dsteam)を導入し、撮像条件の見直しを行っています。しかし、新しい装置にも関わらず、DWIの画像があまり良くないことに悩まされていました。具体的には「SNR」が良くないという問題です。デジタルコイルになり、SNRが改善することを期待していたのですが、T2WIやT1WIといった画像に比較して、DWIの画質があまり向上しているとは言い難いという現状でした。色々工夫してはみましたがうまくいかず、四苦八苦していると、ある条件を変えることでSNRが向上することがわかりました。
Half Scan をOFFにすることで改善
それはズバリ、「half scan」です。従来まで当院ではDWIの撮像にhalf scanを使用していました。これはTEを短くするため、脂肪抑制の効きを良くするためなどいくつかの理由があります。これまでは、DWIにおいてはTEを短くすることが正しい!と思っていたのでhalf scanを全く使わないという考えは持ち合わせていませんでした。(勉強不足です…)
構造が分かりやすいので、良い方の画像から示します。これは、DWIBS法(直接冠状段撮影、自由呼吸下、STIR)で、half scan をOFFにして撮像したものです。肝静脈(黄→)が明瞭に見えます。また腎臓や脾臓など、解剖学的構造(青→)がとてもシャープに描出されています。
下の画像は、half scan ONです。上の画像で視認可能だった肝静脈はほとんど認識できませんし、腎臓や脾臓の辺縁もボケています。さらに肩のところに注目していただくと、SNRの低い部分でとくにザラザラ感が目立っていることがわかります。
half scan OFFの画像を、動画でも示しますね。回転させてみても、辺縁部まで高画質を保っていることが分かります。
別症例を供覧
half scanを使用しないと全体的にボケは少なくなりますが、SNRも向上する傾向にあります。赤矢印の部分、特に肝臓は辺縁までしっかり追うことが出来ています。以下に肝臓を撮像したものを示します。
ボケもSNRも改善していることがわかります。脾臓も含めて描出が良くなっています。
原因がまだ良くわからない
問題はなぜこのような現象が起こるのか?ということです。実はPhilipsの装置にもともと入っているシーケンスは(DWIBSを除き)half scanが入っています。half scanを使用するとMPGからk0までの時間が短くなり、TEを短くすることが出来ます。しかし、MPGによるeddy currentの影響が大きく出てしまうのではないか?というのが現在の考察です。
これはあくまで推測の領域で実証出来てはいません。ボケ(空間分解能)に関してhalf scanが関与しているのは理解できますが、SNRについては正直はっきりとした原因がわかっていない現状です。もちろん、half scanを使用しないと撮像条件にもよりますがTEは伸びてしまいます(5~10msec程度)。今後はファントム等でしっかりと検討を行っていく予定です。
今回は簡単にSNRを改善し、画像向上につながるため、速報という形で書かせていただきました。
もしも回答をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけると幸いです。
東海大学医学部付属病院 渋川周平
MRIを学び始めておよそ3年くらい経ちましたが、本当に奥が深
Chief Editor’s Comments
以前は装置のSNRが低かったので、half scanをONにして、TEを短くすることによりSNRを向上させるadvantageが優っていたのに、装置のSNRが向上したので、むしろデータを完全に取得するhalf scan OFFのほうが画質が良くなったのかもしれませんね。今後の実証をぜひお願いします。調べてもらったところ、Philipsの標準プロトコールにおいて、DWIBSではOFFとなっていますが、そのほかのDWI一般はOFFで提供されているようです。臓器別にON/OFFの最適解があるかもしれませんので、臨床的にも興味深いです。
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