DWI / DWIBS撮像におけるhalf scanについて

皆さんのご施設ではDWIの撮影条件はどうなっていますか?

最近当院では新しいMRI装置(Philips社製 Ingenia 1.5T & Intera 1.5T dsteam)を導入し、撮像条件の見直しを行っています。しかし、新しい装置にも関わらず、DWIの画像があまり良くないことに悩まされていました。具体的には「SNR」が良くないという問題です。デジタルコイルになり、SNRが改善することを期待していたのですが、T2WIやT1WIといった画像に比較して、DWIの画質があまり向上しているとは言い難いという現状でした。色々工夫してはみましたがうまくいかず、四苦八苦していると、ある条件を変えることでSNRが向上することがわかりました。

Half Scan をOFFにすることで改善

それはズバリ、「half scan」です。従来まで当院ではDWIの撮像にhalf scanを使用していました。これはTEを短くするため、脂肪抑制の効きを良くするためなどいくつかの理由があります。これまでは、DWIにおいてはTEを短くすることが正しい!と思っていたのでhalf scanを全く使わないという考えは持ち合わせていませんでした。(勉強不足です…)

論より証拠だと思いますので、画像を提示します。


 

構造が分かりやすいので、良い方の画像から示します。これは、DWIBS法(直接冠状段撮影、自由呼吸下、STIR)で、half scan をOFFにして撮像したものです。肝静脈(黄→)が明瞭に見えます。また腎臓や脾臓など、解剖学的構造(青→)がとてもシャープに描出されています。

スクリーンショット 2015-06-23 7.18.10

下の画像は、half scan ONです。上の画像で視認可能だった肝静脈はほとんど認識できませんし、腎臓や脾臓の辺縁もボケています。さらに肩のところに注目していただくと、SNRの低い部分でとくにザラザラ感が目立っていることがわかります。

スクリーンショット 2015-06-23 7.18.20

half scan OFFの画像を、動画でも示しますね。回転させてみても、辺縁部まで高画質を保っていることが分かります。

別症例を供覧

half scanを使用しないと全体的にボケは少なくなりますが、SNRも向上する傾向にあります。赤矢印の部分、特に肝臓は辺縁までしっかり追うことが出来ています。以下に肝臓を撮像したものを示します。

スクリーンショット 2015-06-26 7.27.47

ボケもSNRも改善していることがわかります。脾臓も含めて描出が良くなっています。

原因がまだ良くわからない

問題はなぜこのような現象が起こるのか?ということです。実はPhilipsの装置にもともと入っているシーケンスは(DWIBSを除き)half scanが入っています。half scanを使用するとMPGからk0までの時間が短くなり、TEを短くすることが出来ます。しかし、MPGによるeddy currentの影響が大きく出てしまうのではないか?というのが現在の考察です。

これはあくまで推測の領域で実証出来てはいません。ボケ(空間分解能)に関してhalf scanが関与しているのは理解できますが、SNRについては正直はっきりとした原因がわかっていない現状です。もちろん、half scanを使用しないと撮像条件にもよりますがTEは伸びてしまいます(5~10msec程度)。今後はファントム等でしっかりと検討を行っていく予定です。

今回は簡単にSNRを改善し、画像向上につながるため、速報という形で書かせていただきました。

もしも回答をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけると幸いです。


 

Author

スクリーンショット 2015-06-23 7.36.06

東海大学医学部付属病院 渋川周平

MRIを学び始めておよそ3年くらい経ちましたが、本当に奥が深い!です。pulse sequenceのことを考えているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。当院には偉大な先輩方がいますので早く追いつけるように日々精進していきたいと思います。

 

Chief Editor’s Comments

以前は装置のSNRが低かったので、half scanをONにして、TEを短くすることによりSNRを向上させるadvantageが優っていたのに、装置のSNRが向上したので、むしろデータを完全に取得するhalf scan OFFのほうが画質が良くなったのかもしれませんね。今後の実証をぜひお願いします。調べてもらったところ、Philipsの標準プロトコールにおいて、DWIBSではOFFとなっていますが、そのほかのDWI一般はOFFで提供されているようです。臓器別にON/OFFの最適解があるかもしれませんので、臨床的にも興味深いです。

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