シカクがマルに?? ~PROPELLER法の不思議~

まず、一枚の画像を提示します。

図1

円形の画像ですよね?
次にこれを撮像した時の設定画面を提示します。

図2

実はこれは四角い容器に水を満たし、容器と同じ大きさのFOVで撮像した画像です。ではなんで四角い対象物が円形の画像になってしまったのか??答えはPROPELLER法を用いて撮像したからです。今回はPROPELLER法のちょっと不思議なお話です。

PROPELLERとは??

PROPELLER法はTSE(turbo spin echo)法にRadial法を組み合わせた様な方法です。図で示すとこんな感じです。

図3

ETL(echo train length)分の幅をもったbladeが回転しながらk空間を充填します。その特徴としてk空間の中心部分を複数回充填するので、積算効果により動きに強い撮像法となります。上図からわかるように、PROPELLER法ではbladeの回転に伴い、位相エンコード方向も回転しますが、この位相エンコード方向の回転がPROPELLER法における不思議な現象を引き起こすことになります。

FOVの内側からの折り返しアーチファクト!?

通常、折り返しアーチファクトFOVの外側から発生します。しかし、PROPELLER法ではFOVの内側からも折り返しアーチファクトが発生する不思議な現象が生じます。この現象を視覚的に捉える為に、簡単なファントム実験を行います。

図4

四角い容器内に希釈した造影剤を張り、容器の隅水を満たした丸い容器を設置した物をファントムとします。このファントムに対し、FOVを四角い容器にぴったり合わせて撮像します。その際、bladeの数を変化させ、比較の為にCartesian法でも撮像します。下図はその結果です。左上がblade 2、右が3、4、下段が8、64、そしてcartesianです。

図5

Cartesian法では設定した通りの画像が得られます(図の右下)。PROPELLER法においてはblade数が2の場合Cartesian法と同じ画像ですが、blade数が3以上では変な信号がアーチファクトとして見られます。これがFOVの内側からの折り返しアーチファクトです。この現象の原理をblade数が4の場合を例として図で説明します。

図6

Blade数が4なので各bladeは45°毎に回転してk空間を充填します。45°及び135°では、FOVがファントムに対してその分だけ回転することになります。その結果、ファントムの角がFOVの外側となるので、その部分が折り返すわけです。従って、各bladeの再構成画像では45°と135°の場合に生じますね。最終的な画像は各bladeの再構成画像が加算された画像となり、折り紙をしたような不思議な画像となります。

どーする、PROPELLER法!!

PROPELLER法では設定したFOVが回転することにより、(見かけ上の、設定時の)「内側」(注:回転した時には外側になる部分)から生じる折り返しアーチファクトを抑制する必要があります。では次にその効果的な抑制方法を紹介します。まず(通常の)FOVの外側からの折り返しアーチファクトに対しては、設定したFOVの外側全てにSAT(saturationパルス)を加えます。FOVの「内側」からの折り返しアーチファクトに対してはPOS(phase over sampling)を用います。ただPOSは収集データ数が増える為、その分撮像時間が長くなってしまいます。その為、適度な量(25~50%位)が良いと思います。その効果を頸部冠状断の画像にて示します。

図7

まずSATとPOSを使用しない画像(一番左)ではスジ状のアーチファクト(矢印)が認められます。また、SATのみやPOS(25%)のみの画像では、ある程度アーチファクトが抑制されていますが、まだ目立ちます。SATとPOS(25%)を併用した画像では、それらがほぼ完全に抑制されています。

以上がPROPELLER法のちょっと不思議なお話です。PROPELLER法は大変便利な撮像法ですが、小さなFOVの場合や、撮像断面が冠状断、矢状断の場合に変なアーチファクトが生じたら是非この方法を試して下さい。良い結果が得られる事を祈っています。

 

【参考文献】

●Pipe JG. Motion correction with PROPELLER MRI: application to head motion and free-breathing cardiac imaging. Magn Reson Med. 1999 Nov;42(5):963-9.

●Kojima S, Morita S, Ueno E, Hirata M, Shinohara H, Komori A. Aliasing artifacts with the BLADE technique: causes and effective suppression. J Magn Reson Imaging. 2011 Feb;33(2):432-40.

ライター紹介

小島慎也(東京女子医科大学東医療センター放射線科)

故郷に新幹線が開通します。一応駅もあるようですが、早い新幹線は余裕でその駅をスルーしていくみたい・・・・残念です。けど、冬は豪雪の為、車では帰省することが出来ないので、新幹線はありがたいです。
kojma
図1

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

MRIfan.netからのメルマガを受け取る!

※以下ドメインメールアドレスはプロバイダのフィルタが厳しく、到達率が低下しております。
確実なメール受信の為に、GmailもしくはYahooアドレスでの登録を推奨しております。

@icloud.com @me.com @mac.com @hotmail.com

*メールアドレス
*お名前(姓)
*種別

おすすめ記事

  1. はじめに 上尾中央総合病院の木下友都です。今年のSIGNA甲子園のテーマは“Signa甲子園…
  2. <新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」 ★〜★★★までの難易度を設定し、M…
  3. 皆さまはじめまして。茨城県立こども病院の加藤綾華と申します。茨城県立こども病院は茨城県水戸市にある1…
  4. (追加・修正)Philipsのスライス厚(Package 1のとき)を修正しました。また、IR pu…
  5. MRI装置は各メーカーごと独自の手法により様々な画像を描出することができますね。 非造影が得意な装…

プレスリリース

登録されているプレスリリースはございません。

Facebookもチェック!

話題をチェック!

  1. 2019-1-12

    ペースメーカ本体(ジェネレーター)の型番だけで、MRIの安全性を判断しないでください!!

    心臓ペースメーカの構造って? 一口に心臓ペースメーカといっても、下図に示すようにペースメーカ本体(…

年別アーカイブ

ページ上部へ戻る