- Home
- Time-SLIP法で肺動脈撮像する!(the best image 2011 入賞)
Time-SLIP法で肺動脈撮像する!(the best image 2011 入賞)
- 2015/1/26
- Other Writers, キヤノン(旧東芝), 創意工夫
- コメントを書く
毎年、年の瀬の恒例行事となっている東芝の画像の祭典 ”The Best Image”。
今回は、2011年に入賞された作品をご紹介します。
非造影にて肺動脈を美しく描出する
Time-SLIP法は、血液をIRパルスで標識して、ある一定時間待つことで、標識した血液の移動を画像化する非造影MRAの手法で、データ収集には血液を高信号として描出するTrue ssfp か FASE法かを選択します。しかし磁場不均一のエリアの肺野ではどうでしょうか?各々の得失を見てみます。
・FASE法・・・不均一な磁化率に強いメリットがあるが、エコー間隔を短くしても流速による信号変化を伴う。
・SSFP法・・・流れに強い高SNR撮像法で、呼吸同期のみで撮像できるメリットがあるが、磁化率アーティファクトが強い。
どちらのシーケンスにも一長一短があるため、撮り比べてみました!
True-SSFP vs FASE どちらを使う?
- SSFP…肺門部の血管が均一な信号で良好に描出されていますが、末梢血管は磁化率効果により描出不良となっています。
- FASE…磁化率の影響に強く末梢まで血管が良好に描出されていますが、肺動脈主幹部の信号は不均一となっています。また、下肺野では末梢血管に少しブレが見られています。この結果から、FASEのほうが良さそうに思います。
さらに、画質をよくするために!
撮像には、心電図と呼吸同期を併用して行います。
FASE法では、拡張期にデータ収集することで血流を高信号に捉えますが、呼吸と心拍のタイミングがずれると、同じ呼吸の位置でのデータ収集が出来ません。その結果、今までは肺動脈主幹部の信号が不均一になり、さらに末梢分枝のボケが生じていました。そこで、呼吸を心拍に同期する方法を考えました。
次に示すようなメトロノームを使って、実際の心拍数を入力し、何心拍に1回呼吸の指示を出すかを設定することで、心拍と呼吸のタイミングを完全に合わせることができるようになりました。
*よく呼吸同期の検査では、患者さんが眠ってしまったり、緊張などから呼吸間隔が不安定になり検査が進まず困ってしまうことがあります。そんな時のために多くの施設では呼吸の指示を出していると思います。患者さんが辛くないような呼吸間隔に設定しましょう。
これにより下記のように画像が改善されました!
呼吸を心拍に同期させた効果とは!
心拍数が73回/分で、呼吸数を16回/分(3.75秒/回)に固定した場合(A)と、5心拍に1呼吸(4.1秒/回)の指示をした場合(B)の比較です。呼吸が心拍に同期することで、肺門部の信号ムラが減少し、末梢血管もきれいに描出されています。また、横隔膜のブレも減少しています。
非造影MRAでも造影CTAを凌駕するほどの画像を得ることができるようになりました!しかし、不整脈や呼吸同期等、被写体依存である部分が多く、実際の臨床現場では制限もあります。時間分解能は造影CTに比べ劣るため、急性期の肺動脈塞栓症例に適応することは困難です。
しかし、治療後に造影CTによるフォローを非造影MRAで置き換えることは出来るかもしれません。
Writer 紹介
池口 裕昭
(KKR札幌医療センター 診療部放射線科)
主にMRIを担当していますが、毎日、凹んでいます。MRIは非常に難解で分からないことばかり…。理解できなくて逃げだしたい時もいっぱいありますが、挫けず頑張っていきたいと思う毎日です。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。